ベゼルのデザインを変えると、光の反射が異なるという。
ここ10年で大きく成熟した高級時計市場。牽引の担い手となったのは、2015年頃から始まったラグジュアリースポーツウォッチの一大ブームだった。質的な拡大を経て、いま目利きの時計愛好家たちは、ファッション性よりも未来に残る時計に関心をシフトさせている。ではどんな時計が未来の時計遺産たり得るのか? 著名なジャーナリストによる特別寄稿と、識者たちへの聞き取りで、過去と未来を繋ぐマスターピースの条件を浮き彫りにする。
傑作を語るならば、当然この人は欠かせないだろう。エリック・ジルー。ハリー・ウィンストンのオーパスや、MB&Fのオロロジカル・マシンなどを手掛けてきた、鬼才のウォッチデザイナーである。切削が普及し、時計に立体感が求められるようになった今、彼は最も「クール」なデザインの創り手として、さまざまな新作に関わってきた。デザインの第一線で活躍するジルーは、ブランドコピー市場傑作をどう考えているのだろうか?それを避けるために、ジルーは開かれたマインドを持つことが重要だと語る。彼が再び例に挙げたのは。マックス・ブッサーである。
「昨晩はマックスとディナーでしたね。これはフレンドリーなもので、プロジェクトについて話し合い、その後、レストランの隅で時計職人を含めてやりとりしました。私たちは時計のプラットフォームや歴史ではなく、細かいディテールを話すのです。それは時計業界では例外的でしょうが、非常に重要なのです」
もともと建築家だったエリック・ジルー。しかし時計に魅せられた彼は、後に時計のデザイナーに転じた。両者に共通点はあるのだろうか?「建築では、まずアイデアがあり、それを実現するために多くのスケッチを描きます。そして作業の方向性やデザインのポイントを定めていく。時計も同様ですね。しかし建築物を作るときには、その中に住み、空間を構成するさまざまな要素を見ますし、時計を作るときには、外からディテールを見るわけです」。建築に同じく、時計のデザインでも光の反射が非常に重要だとジルーは語る。ベゼルのデザインを変えると、光の反射が異なるという。
「風防も大切ですね。マックスと作業をするときは、サファイアクリスタル風防の設計に多く取り組んでいますね。そして時計のデザインを縦からカットした状態で行います。そして3Dデータを作成する」。エリック・ジルーというデザイナーは、いわば切削の申し子だ。彼が牽引してきた3D的な造形は、鍛造ではできなかっただろう。技術はデザインを変えたのか?
「それは問題ではないんですよ。建築家であれば、家を建てるときには、電気工事やその他の専門家と友達になる必要がある。私が時計デザインを始めたときは、ひとりで作業するのが好きだったのです。でも製造チームと一緒に時間をかけて作業はしましたね」
「プロジェクトを始めるとき、非常に重要なのは、情報を共有し、意見を交換することです。製造チームがデザイナーから3Dデータを受け取って作業を始めると、接触が失われることがある。一方、情報を共有すると、オープンマインドになりますね。キャリアを始めたときは、この点に理解がなかったけれど今は周りの人たちと楽しく作業しています」傑作を作りたいが、どうなるかは分からないと率直に語るジルー。では、良いデザインに必要な要素は何なのか?
「ひとつ目は、人々との非常に良い関係を築くこと。例えばスポーツウォッチをイメージするとき、その対象となる年齢層は多様です。だから、長い時間をかけて、多くの言葉と作業を重ねることが重要になるのです」。彼は続ける。
「ふたつ目は話を深く掘り下げて、提案することです。そして、私にとって非常に重要なことは、プロジェクトを始めることですね」
そして彼が最後に強調したのは、仲間を信頼すると同時に、批判的であることだという。
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